海邦DaysKAIHO DAYS

KAIHO DAYS

海邦Days

海邦福祉会の⽇々のエピソードをご紹介します︕

Day1

ある日、理事長が高志保園に訪れるといつも来るはずの“あれ”がない。

それは今からさかのぼること約1年前。利用者さんに
「紙、ちょうだい!」
と詰め寄られたので、事務所にあったA4コピー用紙を一枚あげたところ
「これ、ちがう!」
と突き返された。
「わく!しかく!え!!」
と矢次早に、催促されるから何のことだろうと、ゆっくり耳を傾けると、以前から別の職員に毎日、青い枠で囲った手作りメモ用紙を作ってもらっては、それに絵を描いてもらうのを見るのが毎日のルーティンになっているのだそう。

なるほどね。
ということで、その日から理事長がそのメモ用紙とお絵描き係に就任。

「何描いたらいい?」とその利用者さんに尋ねると
「アンパンマン!」

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それまでアンパンマンなんて一度も描いたことがなかったけれど、それから毎日、園を訪れるときは事前に枠を縁取った手作りのメモ用紙をポケットに入れて行き、いろんなアンパンマンを描いてあげるようになった。
(おかげで絵心がない理事長もアンパンマンだけはプロ級に…)

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ところが、今日はその「紙、ちょうだい!」の声がない。
どうしたんだろう?何かあったかな…。

こういうルーティンが崩れるときは、たいてい何かトラブルがあった時。
事情を知ってそうな職員に聞いてみると、今朝、利用者さん同士の言い合いがあって、今はちょっとご機嫌斜めとのこと。

そういうことか。と念頭に入れて、付きすぎず、離れすぎず、とりあえずいつも通り施設を一周回って、理事長も理事長の見回りルーティンに入ることにした。

そんないつも通りの、でもいつもと違うとある一日の海邦福祉会。

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Day2

高志保園の中に就労支援施設のパン工房がある。そこで働く職員Oさんは、元々地元の専業主婦。
子育て中は家計の足しにと、パートとか短時間の仕事はしてきたけど、まさかパン工房の切り盛りを任されるようになるなんて想像もしていなかった。

パソコンを触ったり、難しい仕事は苦手だけど、そりゃあ2人の息子を育てた主婦ですもの。
料理はそれなりにやってきたし、パンに目覚めて手作りしたこともあった。でも、まさかそれが仕事になるなんて…。

障がい者だとか、就労支援施設だとか、今の私にとってはたいしたことじゃない。
その日の天候や注文量によって、朝の仕込みの段取りも変わってくるから、早めに工房に来てコーヒーを一杯流し込む。これが至福の時。

それからは19歳の頃から知っている、彼ら彼女らとラジオ聞きながら、笑ったり怒ったりしてもう家族みたいにワイワイしながらパンを作る。
いつのまにか私もおばあちゃん?になったけど、この子たちもおじさんおばさんになってきた(笑)

実は一度、この仕事を辞めたんだけど、生活に張りがなくなって戻ってきた。
パートの腰かけくらいの気持ちだったのに、いつの間にか正社員になっちゃってこの歳で社会に必要とされるなんて、思わなかった(笑)

とにかく今は1日でも長くこの子たちと、この仕事を続けられたと思っている。
障がい者だかなんだか知らないけど、あなたたちの方が若いんだから、私がボケだしたら助けてねーなんて言いながら、今日も笑ってパンを作ってる。

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Day3

高志保園の門は施錠されていない。先日も利用者さんが抜け出して隣りの畑に入ってしまったので、理事長夫妻がしこまた頭を下げてきた。
それでも、施錠はしない。

「だって、ここは病院でも学校でもないんだから。」

夫婦そろってそう言い放つ。

とは言え、読谷の自然豊かな畑の中にある施設。
夏になると雑草の手入れも大変な場所にある。ヤギでも飼えば、雑草を食べてくれるし、利用者さんたちの情操的にも良いことあるかな?とヤギをもらってきた。

ところがなんと、ヤギにも好みの草があるそうで庭に生えている草は全然食べてくれない。
代わりにヤギのエサになる草を他から調達してくる仕事が余計に増えてしまった。

そんな園の庭では、昨日の大谷翔平のピッチングに触発された利用者さんが、職員をキャッチャーとして座らせて、完全になりきってピッチング練習をしている。
「バン!ナイスボール!」
「バン!ああ、ちょっと高い!今の球じゃメジャーじゃ通用しないな~〇〇さん!」
なんて、けっこう本気の掛け声でキャッチャーをやっている。

求人広告の仕事内容の欄に「畑侵入のお詫びとヤギの草調達と大谷翔平のキャッチャー役」と書くわけにはいかない。

でもとにかくそういう毎日がここで繰り広げられている。

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